『ヘンリー六世』 [観劇]
彩の国シェイクスピア・シリーズ第22弾『ヘンリー六世』@彩の国さいたま芸術劇場大ホール
2010年3月30日13時開演 1階P列13番
原作:W.シェイクスピア
演出:蜷川幸雄
翻訳:松岡和子
出演:上川隆也/大竹しのぶ/高岡蒼甫/池内博之/長谷川博己/草刈民代/吉田鋼太郎/瑳川哲朗 他
【あらすじ】(彩の国さいたま芸術劇場公式サイトより)
王位継承から薔薇戦争、権力闘争へ
戦いのドラマは続く……
イングランド王ヘンリー五世の死により、その息子ヘンリー六世が王位を継承するが、若い王は政治情勢を統治できず、身内の摂政グロスターと司教ウィンチェスターは反発しあっている。フランスではジャンヌ・ダルクが皇太子シャルルと共に軍を率い、イングランド軍と激しく攻防する。イングランド国内では、ランカスター家とヨーク家それぞれを支持する貴族たちが対立し、一触即発の状況が続いていた。イングランドとフランスの間に和平が締結し、ジャンヌは処刑される。ヘンリーはサフォーク伯の策略によりアンジュー公の娘マーガレットと結婚する。ヘンリーの忠臣グロスター公の妻エリナーが反逆の罪で処せられ、その後グロスター公も王妃マーガレットの愛人となったサフォークの謀略により処刑される。ヘンリーはサフォークを追放し、王妃は悲嘆する。一方、密かに王位奪還の準備を進めていたヨーク公が出兵し、薔薇戦争が勃発する。戦いはヨーク家が優勢となり、ヘンリーはヨーク公に王位の譲渡を約束するが、マーガレットは大軍を率いてヨーク公を刺殺する。両家激戦の末ヨーク軍が勝利し、ヨーク公の長男エドワードが新王として即位する。マーガレットたちはフランスに逃走し王ルイに助けを求めるが、エドワード軍の追撃によりマーガレットは捕らえられ、息子の皇太子は殺害される。ロンドン塔に幽閉中のヘンリーもエドワードの弟リチャードに刺殺され、薔薇戦争は終結を迎える。が、野心家のリチャードはすでに次の王位を目論んでいた…。
いまさらながら感想を(笑)
まずはタイムテーブルを見てほしい。
長いからっ!8時間オーバーって!!!
これははっきり言って何かの修行かと思ったわ。
いやぁ、こんなに長時間劇場にいたことって初!
一日で4本観てるようなものだもんね。
通し券での観劇。
(いつもチケットを確保してくれる友人に感謝♪)
これ、一幕だけ、二幕だけってチケットもあったそう。
でも与野本町って遠いので、2度にわけては足運べないや。
『ヘンリー六世』については、いままで読んだことなかった。
でも上川さんの出演が決まって、読みましたわ。
だってシェイクスピアは原作を知ってた方が断然楽しめる。
というか原作を知らないと楽しみが半減する。
松岡和子さん訳のものも出てるけど、小田島雄志さん訳のものを。
これは松岡和子さん訳の文庫版。
ヘンリー六世 シェイクスピア全集 19 (ちくま文庫 し 10-19)
- 作者: W. シェイクスピア
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/10/07
- メディア: 文庫
これが読んだやつ。
白水社のシェイクスピア全集の「ヘンリー六世」第一部~第三部。
これね、原作読んでおいてほんとによかった。
知らなかったらちょっとついていけなかったと思う。
中世ヨーロッパ史って苦手なんだよね。
で、知ってるからこその弊害も。
客席の大部分が原作を未読だったよう。
なので、表面上の演技で笑いが起こる。
その行為が表してる真の意味からすると、絶対に笑えないようなシーンで。
これは気持ちが悪かった・・・。
例えば、第二幕。
ヨーク公が、王妃と皇太子たちに侮辱され、殺されるシーン。
これは原作を読んだときにもものすごく気分が悪くなった。
“王位”という形なきものに振り回され、殺しあう貴族たち。
“王冠”のためならば人間の尊厳なんてものは皆無に等しい。
自分こそが正当なる王位継承者。
その“欲”ゆえに、大切なものを失い続ける。
悲しくもあり、そのプライドを貫き続ける貴族たちにある種の尊敬の念もあり。
自分には理解はできないけれど、彼らが生きていくために必要なプライド。
散々侮辱され、きっと心から血が噴き出すほどの精神的苦痛を与えられてるヨーク公。
それを見てほくそ笑み、喜び、そして惨殺する王妃と皇太子一派。
にも関わらず、王妃マーガレットを演じる大竹しのぶの表面的な演技に対して笑いが起こった。
このシーンだけじゃない。
この手の“笑えないシーン”で何度も何度も笑いが起こった。
本当に物語の意味を理解して笑ってるならば、この客席にいる人たちは狂ってる。
わかってないからこそ笑えるんだろうけど・・・。
やっぱりシェイクスピア観劇のときは、原作は必ず読もうと心に決めたね。
舞台はシンプル。
後方が階段になっていて、その上にも通路部分。
ちなみにこのステージ上に階段には客席の一部が。
近くで役者は観られるだろうけど、全体を楽しむのにはまったく不向きな席だろうな、という印象。
ステージはすべて白。
キャットウォークから4つのものが落ちてきてシーンを演出。
赤薔薇(ランカスター派)、白薔薇(ヨーク派)、白ユリ(フランス)、そして真っ赤な肉の塊(戦争)。
この赤と白の表現は効果的だったし、薔薇とユリで場面の変化を演出。
セットらしいセットがないため、これはなるほどと思わされた。
(ただ原作知らないと、この花の意味はまったくわからないだろうな)
一幕で、王妃マーガレットとサマセット公のシーン。
サマセットがヘンリー六世に追放を命じられたあと。
二人が別れを惜しみ、愛の言葉を交わしあう。
ここで、大竹しのぶが豪快にコケた。
このあとのフォローが素晴らしかったんだ。
サマセット公を演じる池内博之が、本当に自然に抱きしめてね。
さすがだなぁ、と。
上川さんは、原作読んだときにヘンリー六世ってキャラじゃないなぁ、と。
そつなくこなしてた感はあるけど、やっぱり別の役を演じてほしかった。
ま、実際、タイトルロールとはいえ、この作品ってヘンリー六世って脇役だしねぇ。
へなちょこぶりといったら・・・ほんと情けないばかり。
その雰囲気はよく出てた。
ただ役そのものにあまり魅力を感じないので、もったいないなぁ、と。
もっとがっつり演技してる上川さんを観たかったな。
あ、アイメイクがほんとすごかったわぁ。
横の通路通った時、思わずのけぞったもん(笑)
おもしろいもん観たなぁ(ぉぃ)
見ごたえは充分。
ただ、これ観て思ったのは。
上川さんがやるの知ってパスしちゃった新国立劇場で上演した『ヘンリー六世』。
あれ観たかったなぁ・・・。
やっぱり芝居は「一期一会」。
観たいと思ったものは、そのときに観ないと後悔するってことを実感。
しかし、長かったわ・・・。
終演後は、完全に腰と足にきてました。
修行だったよ、ほんと(笑)
さいたま芸術劇場の壁面ポスター。
ホールに向かうスロープの途中にある物見台(?)みたいなとこにあるのぼり。
ホール入口にあったポスター。
彩の国さいたま芸術劇場大ホール入口。
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