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『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』東京大千秋楽 [CARAMELBOX]

演劇集団キャラメルボックス2009クリスマスツアー
『エンジェル・イヤーズ・ストーリー』@池袋サンシャイン劇場
2009年12月25日14時開演 1階19列30番


東京大千秋楽でした。
もちろん終演後のカーテンコールでは恒例のキャラメル配りも。
細見さんからいただきました♪

集客に苦戦した今公演。
例年のクリスマスに比べても、やはり少々客席寂しいかな。
ここまで入らない公演ってほんとすごいよなぁ。
もちろん、不景気っていうのも理由の一つだとは思うけれど。
18年近くキャラメルを観続けて来た身としては、違う原因も感じたなぁ。


この芝居。
役者のやっている演技の難しさに驚いた。
二人一役。
この二人の役者のシンクロ率がそのまま芝居のクオリティになる。

ここのところ、稽古不足を痛感する初日を観せ続けてるキャラメルボックス。
私は東京公演が始まって2週間ほど経って観劇。
名古屋・神戸はどんな出来だったんだろう、と考えるとちょっと怖い。
実際、観た人の感想は酷評が多いみたいだし。
それが東京公演で客足が伸びなかった理由の一つだろうな。

結局、3度の観劇。
一時期、キャラメルボックスの芝居を観る回数(リピート)が増えた。
でも、今は以前同様3回程度に落ち着いてる。
とはいえ、昔は初日・中盤・千秋楽と観ていた。
今のように、初日から前半を避けて観劇してたわけじゃない。


この芝居。
役者の演技については素晴らしいと思った。
これだけ難しい演技を全力でやってる。
その集中力と演技力、体力はすごい。

ただ、脚本そのものについての疑問があった。

陸奥の存在。
冒頭とラストのシーンの繋がり。

これを自分なりに納得がいくように考えてみた。
それで出した結論。
私個人的なこの脚本に対する裏設定は以下の通り。


まず、このご時世。
社長含み社員4人の中小企業。
しかも経営は右肩下がり。
そこで、理由はどうあれ、お得意さまに暴力を働き、しかも6日も無断欠勤。
この時点で、普通なら解雇だわな。

でも、陸奥は解雇にならない。
それどころか、社長の静治自ら自宅に電話して、母親に居所を聞き出し探しに行ってる。
また6日ぶりに出社した陸奥に対して、他の社員二人も怒りを前面に押し出してない。
不可解。

そして静治。
妻には「子どもたちに興味がなかったのに」と言われる。
息子に「父さんは自分が好きなものにしか興味を持たない」と言われる。
娘には「小学3年生のピアノの発表会を仕事を理由に来てくれなかった」と言われる。
母には「いつものように厳しく」と言われる。
家族を顧みず、自分の好きなことや仕事にしか興味を示さず、しかし頑固で厳しい。
そんな父親像が見える。

しかし、陸奥にはどうだろうか。
解雇しないどころか、28年ぶりにライヴハウスにまで足を運んで追いかける。
6日ぶりに出てきた彼女に対しても、怒鳴ることもない。
最後には唐突に出してきた彼女の小説をあっさり受け取って帰る。
不可解。

これを“落とす”にはこれ一点。

静治と陸奥は不倫関係にある。

ちなみに、社員2人もこれを知ってるでしょうね。
社長の愛人だから、本気で怒鳴りつけることもできない。
働いてれば、誰しも経験したことがあるはず。
社会人なら、本気で誰かを殴りたいほどの怒りを抱えても、笑って済まさなければならないときがある。
ただ、そういうときは根本に“怒り”を抱えて対応してるので、笑いが大げさになる。
オーバーリアクションになったり、ハイテンションになったり、わざとらしくなる。
社員2人のあの大げさなリアクションはそれで結論づけられる。

また、陸奥の2人に対する不遜な態度も理由がつく。
「私は社長の愛人よ?わかってる?」となるわけだ。

さらに深読みすると、静治の妻・詠子もそれを知ってる。
だから「心を読まれたくない」と言う。

で、最後、静治は心の声が聞こえなくなったというけれど、あれも嘘だろうね。
病院のシーンで「聞こえなくなりました」という静治があっさりしすぎ。
おそらく聞こえないフリをしたほうがいいとの判断だろう。

となると、ラストシーン直前。
尻屋のいう「家族と向き合うって決めたんでしょ。いま帰らなかったらこれまでと同じですよ」。
この台詞はとっても深い意味があるわけだ。

そして、唐突に出てきた陸奥の書いた“小説”。
これもあっさり受け取ったのも、静治と陸奥の関係が根本にある。
愛人のわがままくらい受け入れてやろう、ってことだ。

つまり、この芝居は「事故で天使の耳を持った父親が、家族愛に目覚め、絆を取り戻す」のではない。
「家族を顧みず、仕事と愛人にうつつを抜かしてた父親が、天使の耳を使って家族に罪滅ぼしをする」話。
実にどろどろした脚本ってことになってしまうわけだ。
(だって、あのラストを見る限り、静治と陸奥は切れてないもん)


と、まぁ。
友人何人かにこの自論を展開してみた(笑)
みんな納得してくれるんだよねぇ。

そういう芝居があってもいいと思う。
むしろ、おもしろいと思う、こういう設定の脚本。
ただ、キャラメルボックスでは観たくないなぁ。

ま、個人的な感想というか、妄想というか。
そんなことを考えながら観た千秋楽でした。
タグ:観劇
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ちきぴ

最初からこういう「裏設定」をきちんと踏まえての芝居(お話)だったら、ある意味納得するんだけどねぇ。
(ぷりんさんの書いてるように、「キャラメルでその芝居を見たいか」ってのは別問題だけど)

芝居見て、「実はあれはあ~で、こ~だったりして」って話をするのも観劇後の楽しさだったりもするんだけど。

今回の場合、もとの脚本がよれよれだから、こんな風な「裏設定」を、見る側で補足しないと落ち着きどころが見つからなかったんだと思う。


実際問題、すっきりふに落ち過ぎるもん、この「裏設定」(笑)
by ちきぴ (2009-12-26 14:58) 

あさみん


上に同じく(笑)

でも未だに自分の言葉でウマく言えないところもある。
むしろ言わせないようにされてるのかも。。。。


「裏設定」を感じずにいられない作品は
もはや「良作」ではないよ。


by あさみん (2009-12-26 15:06) 

ぷりん

ちきぴさん
確かに観劇して、その場で感じて。
そのあと冷静になって「あれはどういうことだろう」「あれはどういう意味なんだろう」「あれはどうなってるんだろう」って考えるの楽しいよね。
成井さんを信じるなら、こういう裏設定を最初から考えて書いたと思いたい。
ただ、こういう本をキャラメルで上演するのはやめてほしい(苦笑)
by ぷりん (2009-12-26 15:36) 

ぷりん

あさみんさん
自分で考えて「なるほどっ!」って思ったもん、この裏設定(笑)

芝居に“表”と“裏”があること自体は別にいいと思う。
ただ、キャラメルでは表単独でも楽しめる芝居が観たい。
裏を理解しないと楽しめない芝居をキャラメルでやってほしくない。
私の個人的な意見としてはそんなとこかなぁ。
by ぷりん (2009-12-26 15:39) 

ちきぴ

「最初から考えてた」ってのは無いと思うよ。


だって、実際「『Mだけがそれ(声がまだ聞こえてる)に気づくっていう設定はどうでしょう』と、N川さんに提案して二人だけでその芝居をしてます」ってOさん自らが言ってるしね。
by ちきぴ (2009-12-26 16:14) 

ぷりん

ちきぴさん
そうなんだ(笑)
そのあたりは全く知らないので。
んじゃ、やっぱりこの脚本は・・・てことになっちゃうね(苦笑)
by ぷりん (2009-12-26 16:43) 

くまきち

“不倫”関係説ですか?
私から見ると、ちょっと説得力に欠ける気がします。

(1)まず、男の立場から見れば、たとえ相手が売れっ子作家とはいえ、自分の愛人が言い寄られたとなれば、そのことを聞かされればもっと怒るでしょう。私には一従業員に対するセクハラへの怒りにしか見えませんでした。
そもそも、この手のセクハラは前々からのことでしょうし、陸奥が“わがままな愛人”ならとっくに社長にお願いして担当を変えてもらっているはずです。

(2)それから、あの程度の“不遜な後輩社員”なんて今どき珍しくありません。ああいう先輩後輩関係では“不倫”を証明する証拠にはなりません。

(3)あと、日本の企業は大手でも中小でも、たかが6日くらいの無断欠勤では解雇にはしませんし、できません。会社との間の信頼関係を根本的に損なうようなことでもなければ、まずは減俸か配置転換で済ませますし、サービス残業が日常茶飯事の企業ならサービス残業時間をつなぎ合わせて欠勤日を書類上出勤日に書き換えて従業員の雇用を守ることだってあります(そういう事例を私は知っています)。

なので、以上3点から考えて“不倫”関係説は説得力に欠けると私は思います。
by くまきち (2009-12-26 18:37) 

ぷりん

くまきちさん
ご指摘ありがとうございます。
確かに無理はありますけどね。
少なくとも、そう結論付けることで、受け入れられる部分がある、という私個人の解釈にすぎません。
そもそも脚本に対して、100%“正しい理解”はできないと思ってます。
(作者が伝えたいこと100%を受け取れるかどうか、という意味で)
それは受け取り手がある程度、勝手に考えて結論づけて楽しむ部分なのかな、と思ってます。
(もちろん、歌舞伎などの古典には「こういうものです」「こう観るものです」という定義がある程度あるのは承知してます)

というところから、“個人的な感想というか、妄想”です。
そう最後に明記したんですけど。
by ぷりん (2009-12-26 18:47) 

冬生

ようやく。。

やっぱりすっきりしますねえ…
けど一気にどろどろにぃ( ̄▽ ̄;)
私も、これをキャラメルで観たいかと言われるとちょっと笑

原作だとまだ
廃部寸前の演劇部の部活だけをサボり倒してる
(実は脚本を書いている)
普段は優等生な陸奥嬢と
部活に出てほしい顧問教師な
三沢先生(性格はもっと成井さん寄りな印象)
な関係性で、
陸奥嬢もちょいと出る程度なので
…まだ多少は納得できたのですけどねー( ̄▽ ̄;)
by 冬生 (2009-12-28 00:58) 

まなひ

書きましたなぁ~
これ成井さん&加藤さんが読んだら泣くね(笑)

私的にはスッキリしたんだけれどね。
by まなひ (2009-12-28 05:26) 

まりえ

わーお!
これまた大胆な解釈ですねぇ~
観劇後のこういう妄想、わたしも好きですー

不倫て(笑)
キャラメルだからナイけど、他の劇団だったらアリですねー
つじつまが合う(^^;
ぷりんさんのその発想力、すてきです!
脚本書けるのでは!?
by まりえ (2009-12-28 10:00) 

こだま

私自身もどうしても納得のいかなかった陸奥の存在。
この裏設定ならストンっと腑に落ちました(笑)。
なるほどね。
ま、キャラメルでは観たくない設定ですね(爆)。
でもスッキリしました~。

そういえば。
静治が心の声が聞こえなくなったっていうの、私も違うなって感じましたよ。
最後に静治と白神が顔を合わせる場面。
あれはきっと心の声で会話してたんだろうと思います。

by こだま (2009-12-30 09:44) 

ぷりん

冬生さん
原作、買う気も起らなかった・・・(苦笑)
買って読んだ人の感想聞いても、食指が動かないしねぇ。

今回の作品については、成井さんの力量をほんとに問いたいね。
発売記念トークショーのレポ読んでも、かなり疑問を抱くよ。
脚本家・演出家って何なんだろうって思う。
by ぷりん (2009-12-31 01:29) 

ぷりん

まなひさん
あなたも「書け」と煽った一人じゃないかっ!(笑)
芝居の感想を考えるのは自由だから・・・
ま、加藤さんはともかく、成井さんは読まないでしょ。
by ぷりん (2009-12-31 01:32) 

ぷりん

まりえさん
キャラメルだから、ありえないですけどねぇ。
でも、しっくりきちゃうのが怖い(笑)

私、独創性に欠けるので、脚本は無理ですよ。
こうやって人の書いたものに、あーだこーだ言うのが向いてます(笑)

by ぷりん (2009-12-31 01:35) 

ぷりん

こだまさん
あの、静治と白神の無言のやりとりはいいですよね。
でも、ラスト前に会社で静治と陸奥が同じようにやりとりするんですよ。
あれはほんとにいただけない・・・。
静治の決意(天使の耳のことを隠す)を浅はかなものに貶めてます。
何がしたいんでしょうね。
あぁいう意味不明(ストーリーにそぐわない、不可解、でしゃばり)の言動の多い陸奥ってほんとにどういう存在意義なんだろう。
って考えてたら、私なりの結論はこうなっちゃったんです(笑)
ま、ほんとにこんな裏設定があったら、がっかりですわ。

by ぷりん (2009-12-31 01:40) 

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