『黄色い湯気』

らくだ工務店第17回公演『黄色い湯気』＠シアター711
2009年10月17日19時開演 A列5番

作・演出：石曽根有也

出演：
宮本新吉……林和義
益子フクコ……松本紀保
益子一樹……古川悦史
木本鉄平……清水宏
安達亮……今村裕次郎
一ノ瀬サユリ……瓜田尚美
小池……石曽根有也

【ストーリー】
下町の銭湯を営む一人のオッサンと風呂屋の客、そこへやってくる妹夫婦。さしあたって特別なことはない。ただ、ほんの少し近づいたり離れたり、ほんの少し笑ったりイラッとしたり。誰にも言えない悩みを抱えながら、ほんの少し恥ずかしい大人たち。

裸になれば男も女も関係ない…いや、そんなことはない。
むしろ裸になったほうが関係ありありだ。

いつか銭湯での出来事をお話にしたいと思っていた。
銭湯に特別な思い入れがあるわけではないけれど、
他人同士が無防備に裸になれる銭湯という空間に惹かれたから。
銭湯を描く理由、それはきっと僕が日本人だからだ。
イタリア人が銭湯の話を書いたって面白くなんかない…はずだ。

銭湯、番台、浴衣、石鹸、湯上り、脱衣所、コーヒー牛乳、マッサージ。
なんだかすべての言葉が淫靡な響きに聴こえるのは僕だけだろうか

シアター711。
こちらも新しい劇場。
収容人数は60名くらいかな？
こじんまりした小劇場といった感じ。

客席の傾斜もちょうどいい。
舞台は幅6mくらい？
っつか、客席と舞台の段差は20cmほど（笑）
こういう小屋好きだわ。

椅子も比較的座りやすい。
でも、背もたれが心地よすぎて寝そう（笑）


らくだ工務店。
前回公演を観られなかったので久しぶり。
今回の舞台は銭湯。
そこに集まる人たちのちょっと情けなくておかしくて、でも切実なお話。

座組みのバランスは良かった。
小屋のサイズと芝居もぴったり合ってる感覚。
普通に会話をしているようなやりとりが効果的。

ここも場面転換に暗転（完全な暗闇）使うんだよね。
でも、ここのは時系列の区切りがしっかりしてるから、あまり気にならない。
暗転は2回、1回目は一日後、2回目は数日後。
はっきりと時間が経過してる。

清水宏。
ちゃんと“普通”に芝居してるの初めて見たかも？
いつも飛び道具出演が多かったから（笑）
でも、清水さんらしさがしっかり出た役で、よかった。
顔がね、表情がね、色んな感情を表現してるのよね。
売れないお笑い芸人。
そろそろ潮時かな、とも考えつつ、後輩の心配もしつつ。
昔の恋心を引きずりつつ、現実の重みに耐えてたりする。

古川悦史。
スカジャン来て、レザーパンツ履いて登場したときはちとびっくり（笑）
そういう印象、いままでまったくなかったからなぁ。
女性にだらしない妻帯者。
隠し事ができないタイプだから、浮気してるのもバレバレ。
でも憎めないタイプ。
新しい一面を観たねぇ、きっともっと色んな演技できるんだろうな。
今後も楽しみだ。

松本紀保。
もともとふっくらした印象だったけど、ふっくらだった（笑）
紀保さんって実際いくつだっけ？
今回の役どころは40歳すぎ。
浮気ばっかりする夫、妻に逃げられて銭湯のおやじやってる兄。
男どもはいつもだらしがない、決断力がない、逃げてばっかり。
兄を捨てて病気の母の介護を放り出し、男と逃げた義姉に対する怒り。
その義姉を忘れられずに酢橘湯を毎年やってる兄に対する怒り。
浮気を繰り返し、のらりくらりと逃げ続ける腐れ縁の夫に対する怒り。
そして、子どもの頃の恋心、それにしがみつきたくなる女心。
不安定で切実、夢を見てみたい、でも結局は現実的な等身大の女性。

林和義。
気の強い妹、自分と似た部分を持つ義弟、馴染みの客たち。
毎日代わり映えのしない銭湯の一日。
そんな日常を淡々と繰り返す。
ふんわりのんびり、のらくらのらくら。
表面はそんな印象だけど、実際はいろいろ考えてたりするんだな。

中心はこの4人。
小さなエピソード、それぞれの物語が散りばめられてて。
それが相互にかかわってきたり。

ハッピーエンドじゃないんだよな。
すっきりしない終わり方。
でも、なんか、現実ってこんなもんだし、と思ったりして。
この人たちはきっと些細なでも切実なそれぞれの悩み抱えながらきっとこれからも生活してく。
まぁ、そんなもんだよね、私たちだって。


らくだ工務店第17回公演『黄色い湯気』
2009年10月14日（水）～10月25日（日）
チケット前売り3,500円/当日3,800円
会場：シアター711
TEL：[phone]
劇場に電話すればチケット取れるそうです。

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