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『泣き虫なまいき石川啄木』 [キャラメル役者客演]

『泣き虫なまいき石川啄木』表『泣き虫なまいき石川啄木』裏
ハイリンドVol.9『泣き虫なまいき石川啄木』@赤坂RED/THEATER
2010年3月29日19時半開演 E列7番

赤坂RED/THEATER

作:井上ひさし
演出:水下きよし

出演:
石川一……多根周作
石川節子……枝元萌
石川位置禎・カルバン博士……外波山文明(椿組)
石川カツ・片山カノ……はざまみゆき
石川光子・マッキントッシュ……温井摩耶(演劇集団キャラメルボックス)
金田一京助・金本……伊原農

石川京子(声)……野々花

啄木が残した15冊の日記。
「焼き捨てろ」と遺言された妻が、今読みはじめる。

啄木の死後、妻はそこに何をみたか。

東京本郷の床屋の二階を舞台に、
啄木、そして彼の家族と友人が入り乱れ
織りなされるは 借金漬け、質屋通い、嫁姑のいざこざ。
「実人生の白兵戦」wp身をもって体感する啄木。

事実より真実を求めた井上ひさし氏の手により、
啄木の最後の三年間が紐とかれる。

ハイリンドは、ただじっと手をみる。


赤坂RED/THEATER

井上ひさし作品は苦手意識がある。
たぶん、これまでに私が過去に観た読んだ作品がいけなかったのかな。
『泣き虫なまいき石川啄木』を観てそう思った。

毎回、ハイリンドの作品を観ると思う。
「2度観たかった・・・」
今回ももれなくそう思ったし、今までのどの作品より強く思った。

6人の役者が、それぞれとても魅力的に舞台上で“生きてる”。
しゃべっていないときでも、“生きてる”ので、一度ではすべてを観られない。
(実際に、何度も「あ、見逃した」と思う部分があった)

時代が変わっても変わらないものもある。

「心の中の仏と鬼」

他人に冷たく厳しく意地悪に当たるとき、心の中では鬼が勝ってる。
なぜ人は常に人を思いやり、優しくできないんだろう。
そうできればきっともっと幸せでいられるのに。
ちょっとしたプライド、行き違い、ほんの些細の気の持ちよう。
ほんとそんなちょっとしたものが邪魔をしてる。

ほんのちょっとした変化。
それだけで、仏が鬼に勝てる。
そうすれば簡単に人は人を幸せにできるんだろうな。


セットはねぇ、びっくりした。
あのサイズの劇場で、回し舞台使うとはっ!
いやぁ、お見事。

シーンの転換は、出演者と黒子で。
暗転は8割ほどが薄闇暗転。
その中で、転換と衣装替え。
ちょくちょく転換があるので、おもしろかったなぁ。
あれを完全な暗転でやられたら集中力切れてたと思う。


後半のシーン。
互いに自分たちが肺結核だとわかる。
あのやりとりに涙が出た。
ボロボロと涙が止まらなくなった。

切なかった。

もうちょっと早くに互いを思いやれてれば。
もっともっと幸せな時間を過ごせただろうに。

カツが仏壇に向かって「新坊!おまえのおっとさんとおっかさんを守っておくれ!」と叫ぶ。
「わしはもう長く生きた。あの子たちは私の半分も生きとらん!私が生きる分は二人にやっておくれ!」
子離れできない母、嫁いびりして、息子に媚びたり、特に当たったり。
それでもやっぱり息子夫婦の幸せを祈る。
最後に、にっこりと笑ったカツ。
その笑顔が切なくて、でも神々しかった。

多根さんと枝元さん以外は二役。

はざまさんが冒頭のシーンで、片山カノとして出る。
舞台装置の転換があり、次に出てくるときは一(啄木)の母・カツ。
その時の表情の変化は凄かったなぁ。
衣装もメイクも変わってないのに、明らかに“人”が違うんだもん。

まーやは、冒頭では「えぇ?そんな役?」と一瞬。
次に光子として出てきて、やっとほっとした(笑)
両親に反発しながらも、見捨てることができない。
でも両親が自分の人生に落とした影は消すこともできない。
なんか、自分を見てるようで辛くもあり、励まされることもあり、複雑な感じだった(苦笑)

一と京助のやりとりは面白かった。
二人の微妙な関係性。
友人でありながら、境遇が異なり、思想が異なる。
反発することもありつつ、でも生きていれば共通の悩みもある。
これは多根さんと伊原さんだから生みだせた空気だろうなぁ。

一の父、一禎。
外波山さんの演技はほんとおもしろかった。
また何かしら“やらかしてる”のでねぇ(笑)
禅坊主なのに、あのダメ人間加減。
でも、本当に厳しいとわかったときには身を引く潔さ。
ダメな夫、ダメな父だけれど、人間としては魅力的なんだろう、あぁいう人って。
身内にしてみればハタ迷惑この上ないけど(笑)

一が父に対してぶつける厳しい言葉。
あれは痛かったなぁ・・・。
でも結局、許してしまうのは、やはりそれが“親子”なんだろう。
切っても切れないのが血の繋がりなのかな。

一の妻、節子。
ラストシーンで、日記を抱えながらボロボロ涙を流す節子。
「この中に、あの人がいる。お義母さんがいる。みっちゃんがいる。お義父さんがいる。私がいる。」
ただの文字、ただの文章、ただの日記・・・。
でもそこに存在する“思い出”“記憶”。
節子が生きていくためにはそれが必要なんだろうな。
全部が全部楽しい思い出じゃない。
いや辛い思い出ばかりかもしれない。
それでも自分たち家族が生きてきた記録、証。
燃やすことは簡単だけど、燃やしてしまったら永遠に失ってしまうものがある。
それは“もの(日記)”ではなくて、目に見えない何かなんだと思う。

多根さん演じる石川啄木、一。
一人の人間として、魅力的だったなぁ。
友人にお金をせびっちゃうダメ人間だったり。
妻に家出されて腑抜けになって自殺考えちゃったり。
かと思うと、心を入れ替えて自信持ってガシガシ働くようになったり。
家族のゴタゴタにうんざりして、当たり散らすこともあって。
でもダメ両親が好きで、友人を大切に思い、妻を愛してる。
ラスト、暗転前。
書卓に座る一が、節子を見つめる表情がねぇ。
ちょっと呆れて、でも愛おしそうな微笑み。

ハイリンド4人と客演二人、素晴らしかった。
今回も期待以上のものが観られた。
ほんと2度観たかったお芝居。

次回の公演は10月に初の書き下ろし作品をやるそう。
公演期間もいつもより長め。
楽しみだ♪

ハイリンド公式サイトはこちら。
http://www.hylind.net/
タグ:観劇
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