SSブログ

『ロゼット~春を待つ草~』初日 [キャラメル役者客演]

ハイリンドvol.12『ロゼット~春を待つ草~』初日@下北沢「劇」小劇場
2012年2月3日19時半開演

作:早船聡(サスペンデッズ)
演出:水下きよし(花組芝居)

出演:
典子…岡内美喜子(演劇集団キャラメルボックス)
真樹…枝元萌
美晴…高安智実
祐二…多根周作
加賀…伊原農

声の出演…原川浩明(花組芝居)、水下きよし(花組芝居)


30代独身女性典子と主婦の真樹。
中学の同級生だった2人は
小さな会社を立ち上げる。

互いに抱える思いを胸の奥にしまいながら
微妙に揺れ動く友情、恋、家族の関係。
大切なはずのものは
時に近すぎて見えなくなり―。

演劇界注目の若手劇作家・早船聡が
移り変わる女達の心情を
豊かに綴った意欲作を更にリメイク。

ハイリンド2012年、
冬の下北沢に根を張る。
もうすぐ春。




岡内美喜子初客演。
ここ数年、キャラメル以外での彼女の演技を観たかった。
折りに触れ、そう書いてきたし、本人に直接言ったこともある。
それが叶った公演。
その初客演がハイリンドだったのは驚いたけど、嬉しかったな。


岡内さん演じる典子は、植木を扱う小さな会社の社長。
そこのパートで、典子の同級生・真樹を演じるのは枝元さん。
二人の同級生・祐二(多根さん)に、同僚の加賀(伊原さん)、その妹の美晴(高安さん)。
株式会社ロゼットを舞台に、5人で演じられるお芝居。

自分自身に投影する部分もたくさん。
共感したり、反発したり。
言ってることもわかるし、言われた人の気持ちもわかる。
そんな台詞がたくさん散りばめられたお芝居。

会話劇なので、特に冒頭は難しいなぁ、と思った。
今日は、若干の“わざとらしさ”が気になった。
話が進んでいったら、言葉が自然に重なっていった印象。

祐二の存在が、ちょっとしたスパイスになってる。
場面転換がない、ただ会社で繰り広げられる日常。
そこにさり気なく入ってくる非日常。
非日常が関わることによって、動いていく日常。

舞台セットもカラフルでシンプル。
機能的なオフィスを印象づける。
でも、ちょっとした仕掛けがおもしろい。


岡内さん。
大丈夫、と思っていても、やはりどきどきしながら観てたことにあとで気付く。
本人もとあるシーンで、思いっきり手が震えてた。
それ観てなおさらこちらも緊張したけど(笑)
キャラメルでは、声を張って芝居することが多いけれど、ここではそれはできない。
わざとらしくならずに、言葉に感情を乗せる。
動き、視線、表情、間。
強く見えながら、弱い、でもそれを出さない、出せない。
そんな女性を演じてた。
典子を観ながら、共感したり、反発したり。
観ていて心を揺さ振られた。
こういう演技をする“岡内美喜子”が観たかったんだよ。

枝元さん
バリバリ働く典子と対照的な主婦の真樹。
家庭での不満や不安。
認めてもらいたい、でも、認めてもらえない。
誰かに認められない、否定されるのは辛い。
典子に価値観を否定され、提案を却下され、役に立ってないと態度で示される。
その悔しさ、腹立たしさ、怒り、諦め、悲しみ。
そんな感情がチクチクと胸を刺す。
終盤にかけて、腹が座ったあとの逞しさ。
1時間40分で、ここまで変わる、成長する真樹。
枝元さんならではの笑いの要素も楽しい。

多根さん。
この人は、ほんとに毎回意外な顔を観せてくれる。
出てきた瞬間から、怪しい(笑)
服装からして怪しい、チャラい、視線がエロい。
でも、話が進むにつれ、祐二の背景に深さを感じる。
表面の明るさと、内面に抱える暗さ、でもそれを押し退ける強さ。
出番は少なくても、強烈な印象を残す。

伊原さん。
ただの“いい人”なのかと思ってたら、あとから出てくる出てくる。
変態チックなシーンには、ひたすら笑った。
そして、寒がっているはずのシーンで、額から流れ落ちる大量の汗。
冷や汗、と好意的に解釈しておきました(笑)
父へのコンプレックス。
それが強いゆえに屈折した妹への愛情表現。
不器用で真面目だからこそ。
憎めない存在でもある。

高安さん。
登場からその出で立ちにびっくり。えぇ!?
(前回はシェークスピアだったもんで)
でも、お見事。
今時な女子を演じつつも、それだけじゃない。
見た目と違って芯がしっかりしてる。
そのメリハリが気持ちいいくらい。


女性が社会で働くって、男性が働くより色々ある。
結婚をして、子供を持つ。
その時に、男性より女性のほうが縛られるのは事実。
独身で働く女性と、結婚出産育児をする女性は、それぞれに対して憧れと尊敬とコンプレックスと軽蔑。
それだけじゃない、そんな複雑な感情を持ってると思う。
でも自分自身にも、また揺るぎない自信を持っていたいのも事実。
そのために藻掻いてる、頑張ってる。

複雑な感情は、自分でも持て余す。
その感情を相手に向けて、何も考えずにぶつけてしまうとこじれる。
根幹に、相手に対する“愛情”があっても同じ。
時に丁寧に、自分の感情と向き合って、相手とも向き合うことが必要なんだな。
大切な人ならなおさら。

何かあったときに、助けてくれる、助けようと思う友人がいる典子と真樹が羨ましくもあり。


水下さんの演出は、転換が楽しい。
私が、もともと完全な暗闇での転換が苦手なのもあるけど。
舞台装置や小道具を動かす役者の動きも視覚的におもしろい。

初日でこのクオリティ。
やっぱりハイリンドは期待を裏切らない。

公演終盤にもう1回観る予定。
でも、なんだかんだで、初日はやっぱり岡内さんばかり気になって(笑)
なので、真ん中でまた行こうと思う。
進化、深化してくだろう芝居が楽しみ。

たくさんの人に観てほしい。

特に、“キャラメルボックスの岡内美喜子”しか知らない人には観てほしいな。
あぁいう演技は、あのサイズの劇場ならでは。
キャラメルとは違う魅力満載の岡内さんを観てほしい。


ハイリンドvol.12『ロゼット~春を待つ草~』
2012年2月12日(日)まで下北沢「劇」小劇場にて。
まだ席に余裕もあるそうです。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。