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『棄憶~kioku~』 [キャラメル役者客演]

『棄憶~kioku~』ちらし表『棄憶~kioku~』ちらし裏
G-up presents『棄憶~kioku~』@青山円形劇場
2010年3月10日15時開演 Aブロック12

作:野木萌葱
演出:ノゾエ征爾

出演:
里中恭輔(少将 副官)……有馬自由
日村紘一(大佐 細菌製造)……佐藤誓
辰沢士郎(中佐 細菌製造)……大内厚雄
綾部和将(中佐 基礎病理)……野中隆光
古志水徹(中佐 診療所)……瓜生和成
南端智秋(少佐 基礎病理)……保倉大朔
塔山修二(衛生兵 教育部)……清水優


2007年にG-up Backup Seriesとして上演。
有馬さん、大内さん以外は出演者変更しての再演。

ちなみにそのときの感想はこちら。


細かい台詞は印象に残ってるものが結構あった。
でも、肝心の本筋、設定を覚えてなかったんだよねぇ。
これには我ながらびっくり(笑)

あとは、観終わってから、2007年の感想を読み返してみた。
受け取ったものがあまりにも異なっていた。
これにもまた驚いた。


今回、円形劇場での上演ということで、どんな観せ方になるのか楽しみにしてた。
でも、実際には円形ステージではなかった。
中央に四角いステージ、奥に通路となる花道。
客席はその二辺に対する半円状。(実際には5分の2くらいの円かな)

最初、舞台上にセットは何もなし。
オープニングで塔山役の清水さんが椅子を3脚と机を持って登場。
録音された“語り”(清水さんの声)が入り、その間にセッティング。
“語り”が終わると塔山と辰沢のシーンとなる。

はっきり覚えてないんだけど、前回はこういった説明となる“語り”はなかったよなぁ。
時系列としては確かにわかりやすくはあるんだけどね。
舞台の演出手法としては、私はあまり好みではない。<録音
その場で生の声で発する、という選択肢もあると思うのだけど。


2007年は、ラストの塔山の叫びに共感した。
またそれに対する里中、辰沢の言葉に打たれた。
確かに今回もそのシーンは心に響くものがあった。
でもそれよりも響いたもの。

《辰沢の決意》

「誰しも一つや二つ、人に言えないことぐらいあるでしょう」
そういった、辰沢の表情に揺さぶられるものがあった。

大義名分と正義。
必ずしも相容れるものではない。
自ら選択し、決断し、望み、覚悟し、背負う責任。
でも、そこに後悔がないわけでもない。
何かを手に入れ、何かを失う。
失ったもの、戻れない道。

何かしら理由をつけ、正当化し、何かを選択する。
多少なりとも、そういう瞬間は日常に転がってる。
そこに自らの意思が存在するか否か。
自らの意思で選びとったものは、自ら責任を負う。

大義名分。
時にその力を借りて、自分自身を騙しているときってある。
自分自身に暗示をかけているときがある。
本当は疑問を持っていても、納得していなくても、そうして自分自身を守ってる。

ただ、「大義名分」は必ずしも「倫理」や「正義」などとイコールではない。

今回の舞台を観ながら。
本当に強い人ってどういう人なんだろう、と思った。
里中が強いのか、辰沢が強いのか、他の誰かなのか。
もしくはみんな弱いのか。


里中の「死ぬなよ」という台詞。
これこそが、「責任」なんじゃないだろうか。
生き続けること、苦しみ続けること、それが責任を負うこと。

たぶん、3年前は私は塔山の立場だったんだと思う。
言われたことをただやるだけ。
納得がいかなければ、命令した人に何でだと詰め寄るだけ。

今回、ラストシーンの塔山を見ていて思った。
「それじゃダメなんだよ。」
私はこの3年で少しだけ、責任を負う立場に近づいたのかな。
あの頃よりかはその覚悟を持ってるのかもしれないな。


役者個別の感想。

有馬さん。
前回のつかみどころのない里中から一歩踏み込んだ感じ。
2007年では登場人物に対して「狂ってる」という表現を使った。
そうならば、今回の里中は狂ってる自覚がありつつ、それをコントロールしてる。
さらに客観的に自分と周りを判断して、全体を俯瞰してる。
そういう懐の深さを感じた。

あつをさん。
自らの選択による“責任”。
失った“もの”、取り戻せない“もの”。
「3000人分のデータと引き換えにしたのは、金と同胞の身の安全だ」
守りたかったもの、守れたもの、守れなかったもの。
その代わりに背負ってしまった大きな十字架。
一番“人間らしい”感情を見たのは、一番“人間らしくない”行為をした辰沢だった。

瓜生さん。
前回、古志水は工藤潤矢さんが演じた。
これがねぇ、印象がまったく違うんだよね。
同様に綾部を演じた野中さん。
前回は有川マコトさん。
こちらもまったく印象が違う。
二人とも、前回特に個性的な役者が演じてた役だけど、それを完全に払拭してた。
たぶん、この二人の印象が違うことで、芝居全体で受け取る印象が違った気がする。
それくらいいい演技だった。

塔山役の清水さん。
冒頭の辰沢とのやりとりでは、完全に食われてる。
でも、役どころとしては大佐と衛生兵。
それで正解なんだなぁ、とあとで気付く。
軍隊、それも前線の特殊部隊にいたわけで。
当時の上司たちを前にした緊張と不安、怯え。
でも、戦争は終わったという事実。
ラストシーンの塔山の叫びは、切ない。
実際に責任を負っている研究者6人よりも、塔山のほうが生きるのが辛い気がする。
演じてる清水さんも、これけっこうしんどいだろうなぁ(苦笑)


舞台と客席の作りによって、役者の表情が見えないシーンが出ちゃうのが残念だった。
「妻は、昨日死んだよ」といった辰沢の表情は完全に後頭部。
あの表情観たかったなぁ。

それ以外は、ちょうど客席の真ん中あたりだったので、正面に役者がいることが多かった。
って、里中が目の前にいたりすると、かなり威圧感あってやだったけど(笑)

何人かの左手薬指に光る結婚指輪。
この人たちは、こういう“異常さ”を持っていながら“日常”があるんだなぁ。
人間って二面性、あるいは多面性のイキモノなんだよな、と。

今回はしっかりまとめられない感想になっちゃったな。
タグ:観劇
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コメント 2

あさみん

私もAブロックだったから、
あつをさんの最後のシーンが背中でね。
顔観たかったな~。
by あさみん (2010-03-13 12:09) 

ぷりん

あさみんさん
あぁいう劇場だと仕方ないんだけどね。
やっぱり観たかったよね(笑)
by ぷりん (2010-03-16 02:52) 

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